12月7日告示、14日投開票の東久留米市長選挙に向け、現職の富田竜馬氏が2期目を目指して立候補する。2021年の市長就任直後にコロナウィルスが日本を席巻した。足元の経済対策と行政改革を並行しながら、公共施設の老朽化対策やDX推進、子ども施策などに取り組んできた。今回の選挙では、人口減少社会に対応したまちづくり、財政状況を踏まえた公共施設の最適化、子育て支援の継続強化、環境資源の活用などを重点に掲げている。

 はなこタイムスでは、東久留米市のコミュニティFM局「TOKYO854くるめラ」と共同で独占インタビューを敢行。富田竜馬氏の政策について聞いた。


──まず、1期目をどう振り返りますか。

富田竜馬氏(以下、富田氏):
 はい。コロナ禍でのバトンタッチから始まり、その後はウクライナ情勢の影響による物価高が続きました。まずは足元の経済対策、目の前の方々への支援が必要でした。

 一方で、以前から取り組むべきと考えていた公共施設マネジメント(※1)やデジタル化などの課題にも向き合い、両者のバランスをとりながら進めてきました。多くの方々の協力もあり、公約の多くは実現または着手できたと考えています。全力で駆け抜けた4年間でした。

──2期目に向けて、特に強化したい点はどこですか。

富田氏:
 今必要な支援として、物価高対策や高齢者福祉の充実があります。地域センター(※2)を1つ増設する予定です。1期目で重点としていた公共施設マネジメント、DX、子どもへの投資については基盤が整いつつあり、2期目ではさらに進めたいと考えています。

 東久留米市は市制55年(※3)を迎え、公共施設の老朽化や人口減少、労働力不足など大きな変化に直面します。新しい視点を加え、これからの4年間で対応していきたいと思っています。

──財政が厳しいという指摘がありますが、どのように捉えていますか。

富田氏:
 市民に「財政が厳しい」と伝えることが目的ではありませんが、正確な現状認識は共有する必要があります。東久留米市は突出して財政(※4)が良い時期はほぼなく、個人市民税に依拠した構造的な課題があります。法人市民税も多摩地域で下位です。

 企業城下町にするつもりはありませんが、地域経済を循環させる視点は必要です。利便性向上や交流人口の増加を図ることで、これまでのベッドタウン型(※5)から転換していきたいと考えています。

──人口減少の流れの中で、企業誘致なども必要になりますか。

富田氏:
 公共施設の規模をすべて維持するのは難しく、大規模団地の建て替えも想定されます。用途地域の見直しなど、きめ細かい都市計画が必要です。大企業だけではなく、小規模でも志のある事業者が活動しやすい環境を整えることが大切だと思います。

──インフラ整備について、下水道の老朽化対策はどう進めていますか。

富田氏:
 総延長が長く、費用も大きい分野です。市では計画に基づきストックマネジメントを進めており、計画的に対応することが重要だと考えています。

──都市計画道路の水源地を通る道の問題(※6)など、環境との兼ね合いはどうお考えですか。

富田氏:
 都市計画道路の予定地には「そこも通るのか」と驚かれる場所もあります。線引きがあるから進める、という考えではありません。市民が大切にしている場所は検討が必要です。東京都と協議を進めていますが、現状で新たに追加する考えはありません。一つ一つ必要性を判断しながら進めます。

──子育て施策ではどのような取り組みを進めてきましたか。

富田氏:
 1期目の4年間で、小学校体育館へのスポット空調、中学校全教室へのプロジェクター導入、スクールソーシャルワーカーの増員、不登校支援などを進めました。ファミリーアテンダント事業では、こちらから家庭に出向く支援を実施しました。

 また、子どもたちの声を踏まえ、ボール遊びができる広場 (※7)を3か所整備しました。今後も子どもや保護者の声を聞きながら進めたいです。

──中学校給食についてはどう考えますか。

富田氏:
 温かい汁物の提供を始め、概ね好評でした。お弁当を選ぶ生徒もおり、選択制が一定浸透しています。小学校と同じ形態を求める声も承知していますが、中学生には事情も多様で、現在の形態も一つの選択肢と考えています。

──環境保全と地域振興の両立についてはどう進めますか。

富田氏:
 畑地は減少傾向ですが、市は緑の基本計画に基づき、必要な土地を基金で購入し保全しています。手塚治虫氏ゆかりの地であることから、手塚プロダクション( ※8)と覚書を結び、今後の活用を協議しています。

──「道の駅」構想について教えてください。

富田氏:
 観光地型ではなく、都市近郊のベッドタウンに適した形の施設を検討しています。民間企業の反応も良く、内部で検討が進んでいます。手塚作品や温浴施設(※9 )、古民家など地域資源と組み合わせ、経済の起爆剤にしたいと考えています。

──ふるさと納税の現状はどうですか。

富田氏:
 グローブライドさん (※10) のリールを追加した時のインパクトは相当なものでした。それだけでなく、市内のさまざまな商品を順次、追加しています。

 市外への流出は約4億円で、交付税措置を踏まえると約1億円のマイナスです。一方、寄付額は約2億円で、その半分以上が事務費に充てられます。結果として概ね収支は均衡しています。返礼品は今後も拡充していきます。

──最後に、市民へのメッセージをお願いします。

富田氏:
 この4年間、多くの市民や関係団体の支えを受けて職務を果たすことができました。東久留米市は財政的に厳しい面もありますが、知恵と工夫で発展できる潜在力のあるまちです。老朽化した公共施設を前向きに捉え、より良いまちに向けて新しい視点で取り組みたいと考えています。市民の皆さんと建設的な議論を積み重ね、より住み心地の良いまちづくりを進めていきたいと思います。


※1 公共施設のマネジメント: 東久留米市では、公共施設の老朽化対策や、DX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)を基軸とした本庁舎の最適化などを盛り込んだ「近未来型市役所実現ビジョン」の検討が進んでいる。

※2 地域センター: 現在、東久留米市内には「西部地域センター(滝山)」「南部地域センター(ひばりが丘団地)」「東部地域センター(大門町)」の3か所が設置されている。

※3 ちょうど55年: 東久留米市は1970年(昭和45年)10月1日に市制施行を行い、2025年時点で55周年を迎える計算となる。

※4 財政状況: 東久留米市は、新市庁舎等の建設事業により地方債残高が増加した経緯があり、2003年度決算では経常収支比率が92%に達するなど財政の厳しさが指摘されてきた。令和7年度予算においても財政運営の概要が公開されている。

※5 昭和のベッドタウン: 1960年代前半から「東久留米団地」「滝山団地」「ひばりが丘団地」などの大型団地が建設され、1960年からの10年間で人口が4.1倍に増加した歴史がある。現在はこれらの地域で高齢化が進んでいる。

※6 水源地を通る道の問題: 東久留米市には「平成の名水百選」に選ばれた落合川と南沢湧水群がある。一方、都市計画道路(例:多摩新宿線構想や東村山都市計画道路)の整備においては、環境保全や用地買収の観点から議論が生じている。

※7 ボール遊びできる広場: 市内の公園整備に関連し、子育て環境の充実を図る施策の一環と位置づけられている。市は「第3期子ども・子育て支援事業計画」の策定なども進めている。

※8 手塚プロダクション: 漫画家の手塚治虫氏は1980年から逝去まで東久留米市に在住していた。2021年には東久留米駅前に『ブラック・ジャック』の銅像が設置されるなど、地域振興に活用されている。

※9 温泉施設: 市内には「スパジアムジャポン」などの温浴施設がある。

※10 グローブライド: 東久留米市前沢に本社・工場を置く企業(旧:ダイワ精工)で、釣り具などの製造で知られている。

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By 澤田篤志

はなこタイムス編集部|フリーランス物書き|TOKYO854くるめラ(85.4MHz)で毎週木曜日13:00より「くるめラニュース」のパーソナリティ|座右の銘「質より量」|二児の父|ドーナツはコーヒーに浸けて食べる推進派

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